ふつうの結婚 5 〜Mr&Mrs AKABANE 〜
「なぁ卑弥呼まだ殺ってないんだって?」
「手強くてね」
卑弥呼はむすりと答え、敵に手榴弾を投げる。
「そろそろやばいんじゃねぇーか?奪い屋と運び屋が夫婦ってぇのは、流石にお上様にバレちゃアウトだぜ。いくらお前でもよ」
「わかってるわよ」
答えながら火炎香を投げる(瓶ごと)
まったくもって忌々しい。さすがは赤屍蔵人というべきか、なかなか決着がつかない。
離婚宣言をしてから家の中、ビルの中、町の中、メスの中、炎の中、病院の中。赤屍夫婦は数あまたの戦いをしている。
そして卑弥呼はやられたり、やったり、やりまくったりしてるいるにも関わらず最後の最後のとどめが刺せない。この間なども邪魔が入ったので、催眠香で意識を無くした赤屍をそのまま風俗店の前に置き去りにしてやったが、その後奴がどうなったかなんて知ったこっちゃない。
「さっさと始末しろよ。旦那だからって怯むようなタマじゃねぇだろーが。…って、おい投げすぎじゃねぇか?」
「気のせいよ」
「そうか。…そうかぁ??」
気がつけば戦国自○隊も真っ青な辺りの焼け野原っぷりに、蛮は疑問符を飛ばすが、卑弥呼は気にしない。
「今日こそ、殺るわ」
レディポイズンは最後の仕上げに爆炎香を放った。
「赤屍先生!」
とニコやかに同僚から、ソープの割引券を渡される。
「赤屍先生…」
はにかみむナースからホテルの部屋番号のメモを渡される。
ばさばさばさっ。と赤屍先生は割引券とホテルメモをゴミ箱に捨てる。
彼は心底うんざりしていた。
どうやらというか、絶対というか。すべては先日の卑弥呼との戦いの末に風俗店の前で気を失い、あろうことかたまたま通りかかった同僚に看護してもらったという赤屍蔵人記念すべき人生の汚点のせいである。
それからというもの同僚からは、
「水臭いなぁ、赤屍先生言ってくれば良かったのに」
ばんばんっと肩を叩かれる。運動部仲間のような扱い。
ナースからは
「赤屍先生…」
色目、流し目の乱れ打ちを受ける(でもNOダメージ)時には何故か菩薩のような慈愛の瞳も向けられる。ナースからは狼の前に出された美味しそうなフリーの子羊扱い。もしくは同情すべきダメ男扱い。
そもそも赤屍医師には奥さんの年齢からして「赤屍先生はロリコン気味」という公式設定があった。
今回はそれに新たな項目が追加したことから、天下無敵な赤屍先生から身近な赤屍先生に周囲の見る目が変わったらしい。
言うなれば芸能人の意外な一面を見て「ああやっぱり、この人も同じ人間なんだ」と思う心理というか、スキャンダラスが発覚して神性が少し剥がれたスターというか。
ともかくこれまで1mmのペライ笑顔で他人を遮断。うまく距離をとってきた彼にとってはこの上なくウザイ状態だ。
元々彼はまぁったく風俗店というものに意義を見出していない。三度の飯より一匹の敵。一夜の思いより一時の戦闘。彼は自分が種族保存の法則から逸脱したある種の変態動物であるということは自覚している(そうなんだ…)
――だから自分が風俗店なんて行くはずないんですよ馬鹿馬鹿し・・・
ゴツンッ!!
悶々と考え事をしていた赤屍先生の顔面は、ドアの上の壁と衝突した(186ですから…)
「……」と額を押さえる赤屍を、ナース達が目撃する。
「きぁああ、赤屍先生の顔が!!」
「いつも冷静沈着な赤屍先生が…。やっぱり奥さんに捨てられた上に、ソープ嬢のキャサリンに捨てられたのが相当ショックだったのね」
「違うわよ女子高生性感マッサージ師のリカちゃんと別れたのよ」
「えっ赤屍先生が倒れていたのは、今流行の萌え〜なメイドイメクラでしょ。先生はそこNo1ネコ耳メイドロボの朱音ちゃんともへもへして恋は終わったの。」
「ちょっと先生は、向こうに旦那と子供がいるシンガポール人ソープ嬢とW不倫でしょ」
「はぁ?リカちゃんでしょ。先生はロリコンなのよ!忘れちゃ失礼よ」
「ちーがう。先生は実は萌えーな人なのよ!!」
どう転んでも赤屍先生は女に捨てられたことになっているらしい。
「どうであれ赤屍先生もあんなストイックそうな顔して結構たまって…」
ばたんっっ!!
叩き割る勢いで、扉を閉める。
苛苛しながら机に座ると、机の上には風俗店のパンフレットがどっさり。ご丁寧に「ここがオススメです☆」と赤いマーキングが入っている。
同僚の心のこもったプレゼントをメスで瞬時にコマギレにしながら赤屍は「もうこの病院辞めちゃいましょうか…」と考える。
瞬間。敵の気配を感じて椅子を蹴り飛ばして後退する。
爆音と供に現れたのは――
別居中の妻が銃をランボー持ちで窓から入ってきた姿だった。
その拍手をしたくなるほど勇ましい姿対して、赤屍はメスを構えながら、頭の中では辞表の書き方を思い出していた。
続く
赤屍医師は愛されてます。
しかし出来は微妙(沈)